日本共産党神奈川県議会議員団

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議会報告
2025年3月3日

2025年第1回定例会 質問趣意書(文書質問)

神奈川県の不妊治療支援をすべての県民に届けるために
現在、我が国の出生数は減少の一途をたどっており、2024年には70万人を割り込むことが予想されています。この深刻な少子化の状況に対し、国や地方自治体が一体となって対策を講じることが急務です。一方で、不妊治療を希望する方々の数は年々増加しており、2022年には体外受精による出生数が7.7万人に達し、全体の出生数の10人に1人以上を占めるまでになりました。このことからも、不妊治療への支援が少子化対策の重要な一翼を担っていることが明らかです。そして何より、身体的・精神的・経済的に大きな負担を伴う長く苦しい道のりを歩む不妊に悩む当事者に寄り添うものです。
神奈川県が、不妊治療の先進医療に対する支援を開始し、大きな前進を遂げたことは評価に値します。しかし、現時点で県と協調補助を行っているのは県内16自治体で、来年度からの実施を目指している自治体を含めても19自治体であり、人口で言えば半数に届かず、支援の広がりが十分とは言えない状況です。
そこで県としてこの現状のどこに課題があると考え、どのように改善していこうと考えているか知事に伺います。
さらに、不妊で苦しむ当事者に寄り添った支援を進めるためには、県内どこに住んでいても、自治体の財政力に左右されることなく不妊治療の支援制度を利用できるようにすることが不可欠です。そのため、県として不妊に悩む当事者一人ひとりに寄り添い、その苦しみを軽減し、希望を持って治療に臨める環境を整える必要があると思います。
県内どこに住んでいても不妊治療への支援が受けられるよう、県単独の制度を創設すること、少なくとも県の補助割合を増やすべきと考えますが、知事の意気込みと今後の具体的な方針について伺います。
不妊治療支援は、人々の人生と向き合う施策です。神奈川県が不妊に悩む方々の声に耳を傾け、持続可能な支援体制を築くための牽引車となることを強く望みます。

県内企業に就職をする若者に対する奨学金返済支援制度の創設について
労働者福祉中央協議会が2024年6月に行った「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート」(https://www.rofuku.net/20241018/)によれば、奨学金利用者は大学卒業者で45.2%、全体でも31.2%にのぼっています。また、奨学金返済について7割が不安を感じ、4割半ばが生活苦を感じているという深刻な状況が明らかになりました。さらに、奨学金返済が結婚、出産、子育てへの影響を及ぼしていると感じる人が4割近くにのぼり、この状況は以前から改善が見られていません。
アンケートの記入意見には「奨学金返済がなければもっと楽しく生きられた」「兄の亡くなった保険金のおかげで返済できた。 そうでなかったら、不妊治療の末の2人の子供を持つことは考えられなかった。 これから不妊治療をする人の中にも、奨学金の返済で諦める人も必ずいると思う。 返済についてもう少し救いが必要だと思う」など、奨学金という名の借金が卒業後のスタートに大きな足枷となっている現状を突き付けています。
教育費の負担軽減については、高等教育まで段階的に無償化するという国際人権規約の規定を批准した政府が、もっと積極的な取り組みを行うべきと考えます。しかし、それまでの間、住民の福祉向上や国の施策を地域から引き上げていくために、地方自治体としても様々な取り組みを組み合わせて教育費の負担軽減に取り組むべきです。
このような背景を受け、兵庫県では、県内中小企業に就職した若者に対して、本人・企業・県が1/3ずつ奨学金返済を負担する制度をさらに拡充し、本人負担分も県が負担する形で、企業1/3、県2/3を支援する制度を実施しています。この取り組みは、若者の経済的負担を軽減し、将来への不安を解消するだけでなく、中小企業の人手不足解消にもつながる効果的な施策として注目されています。
県内でも川崎市が教員不足解消に向けて、採用試験の上位者に限定されているものの、最大で200万円の奨学金返済支援を導入しようとしています。
東京都でも教員や技術系の公務員に対して返済を支援する方針を明らかにしており、神奈川県が後塵を拝しているのは明らかです。
こうした奨学金返済支援制度は、企業にとって大きなメリットがあります。就活に取り組む学生にとって奨学金の返済負担が軽くなることは、県内の中小企業への就職を選ぶ動機になります。これにより、企業は優秀な人材を確保し、人手不足の解消につながります。
また、経済的な負担が減った若者は、将来に希望を持ち、長く働き続ける意欲が高められることで、従業員の定着率が向上し、採用や教育にかかるコストも削減できます。
さらに、企業が若者を支援することで、地域社会からの信頼や評価が高まります。社会貢献に取り組む企業としてのイメージが向上することは、経営基盤の長期的な強化にもつながります。
このように制度を導入することで、応募が増え定着率が上がる可能性が高まることを踏まえれば、企業にとっても大きなプラスになるはずです。
帝国データバンク横浜支店の2024年10月の調査では、県内企業の55.7%が正社員不足と回答しており、「小規模事業者を中心に大企業の賃上げペースに追いつかず、人材の確保や定着が難しくなることが予想される」と指摘しています。神奈川県として人材確保策に取り組んでいるものの、依然として中小企業の人手不足が解消されていない現状を踏まえれば、取り組みの幅を広げ、小規模事業者も人手を確保できるように特段の支援をすることが必要です。
そこで神奈川県としても、若者の将来不安の解消と中小企業の人手不足解消を両立させるため、県内中小企業に就職した若者に対して奨学金返済の支援制度を創設すべきと考えますが、知事の考えを伺います。また、とりわけ体力の少ない小規模事業者に対して企業分も県が負担し、奨学金返済支援制度を導入する企業を広げるべきと考えますが、知事の認識の到達を伺います。

当事者目線の障害福祉を推進していくための施設運営の在り方について
1.障害者施設の運営方法のあり方について
現在、ライトセンターと聴覚障害者福祉センターの次期指定管理者の指定に向けて準備がなされていますが、常任委員会の報告で指定管理者の選定に「経費節減」を評価項目に入れている点に強い違和感を覚えます。当事者目線の障害福祉推進を掲げるのであれば、障害者施設の運営は、コスト削減よりも当事者のニーズに応えるきめ細かな対応を最優先するべきであり、知事の言葉の本気度が問われています。聴覚障害者福祉センターは、現在も当事者団体が運営に関わり、利用者目線のサービスを提供しています。運営に当事者団体が関わることで、施設の使い勝手や課題解決、改修・改善が当事者の目線で進められることが担保されると思います。
一方で、ライトセンターは、これまで指定管理者だった日本赤十字社神奈川県支部が次期の指定に手を挙げないとされており、ライトセンターを利用する視覚障がい者の方々の目線に立った運営をしていけるのかが目下の課題と言えます。障害者施設の運営は、単なる「効率性」ではなく、「持続可能な支援体制」の構築が肝心であると思います。
実績のある指定管理者が次期運営に手を挙げられないほどの経費節減を迫り、競争にさらすことになる公募が、逆に当事者目線の障害福祉推進のハードルになってしまうという不公正な結果を招来しているのではないでしょうか。施設を直営に戻し、業務委託などで当事者の目線を運営に反映していくなどの手法も視野に入れるべきではないでしょうか。
そこで県立の障害者施設の運営については当事者団体の参画を促し、県の継続的なモニタリングを通じて課題解決に取り組む姿勢が大切と考えますが、知事の見解を伺います。
また、新たな指定管理者が選定されることとなるライトセンターにおいて、経費節減も含めて競わせる公募ではなく、当事者目線でライトセンターを運営し障害福祉を推進できる団体を指名によって選定することや、直営に戻し当事者団体に業務を委託するなどの方法を検討すべきと考えますが、知事の見解を伺います。

2.視覚障がい者が安心して利用できるプールの確保について
現在、ライトセンターではプールの利用が休止されています。私が当事者団体の方から伺った「安心して安全に利用できるプール」は、ライトセンターを含めて県内2カ所くらいしかないとのことでした。視覚障がい者にとって、水泳は健康維持や社会参加の重要な手段です。パラリンピックで活躍する選手もいる中、ライトセンターのプール休止は大きな支障となっています。特に、同施設のプールは視覚障がい者にとって「安全に泳げる数少ない場」であり、早期の利用再開が強く望まれています。
加えて、ライトセンターだけに依存せず、県内各市町村のプールでも視覚障がい者が利用しやすい環境を整える必要があります。例えば、体育センターは公共交通機関でのアクセスに時間がかかるため、地域の身近なプールで対応できるよう、バリアフリー化やスタッフ研修を進めるべきではないでしょうか。
そこで県として、ライトセンターのプールの改修を進めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。また、県内各地で視覚障がい者が安全に利用できるプールを普及していくための具体的な方針を示してください。また、市町村を含めたプール運営者に合理的配慮の提供ができるよう助言や必要な施設整備へ支援すべきと考えますが、知事の見解を伺います。

県の特別養護老人ホーム整備促進の本気度について
団塊の世代が75歳となるいわゆる2025年問題の年を迎え、神奈川県は全国平均よりも年少人口や生産年齢人口の割合が多いとはいえ、今後高齢者人口の割合が増加する事態を避けることは難しい状況となっています。神奈川県高齢者居住安定確保計画においても、高齢単身世帯は今後も増加が見込まれており、介護が必要となったときに安心して入所できる公的施設として特別養護老人ホーム(以下、特養)が重要な役割を担っています。昨年の特養待機者は、全県で1万人を超えており、その状況が解消される見込みもありません。
特養は、低所得者や重度介護が必要な高齢者、地方在住者など、社会的に弱い立場にある人々を支える重要な役割を担っています。公平性の確保、地域格差の是正、家族負担の軽減、公的責任の履行など、高齢化が進む日本社会において、特養を整備する必要性は一層高まっていると言えます。
かながわ高齢者保健福祉計画第8期では、3年間で約3400床の整備を進め、待機者の解消を目指していました。しかし、第9期計画では整備目標を掲げるのではなく、市町村から寄せられた待機者数をサービス提供目標として積み上げただけで、県としての特養整備に対する姿勢が明らかに後退しています。
依然として待機者が多数いるにもかかわらず、待機者解消のための特養整備が進まない理由として、現状で特養に空床があることや、待機者から入所を断られるといった事業者からの声もあります。しかし、それは直ちに特養の需要が満たされていることを示すものではありません。実際、2020年(令和2年)3月の「特別養護老人ホームのサービス提供実態に関する調査研究 報告書」によれば、広域型、地域密着型ともに定員に対する入所率は97%前後となっており、地域による差はほとんど見られず、いずれの都市圏・都市区分でも同様の状況であることが報告されています。
また、2023年(令和5年)3月の「特別養護老人ホームの入所申込者の実態把握に関する調査研究 報告書」によれば、入所辞退理由の上位を占めるのは、入院や他の特養や施設への入所が決まったこと、医療ニーズに応えられないことなどですが、入所費用の負担が困難であるという回答も無視できません。介護度1、2の方は原則として入所できないという状況や、多床室に比べて入居費用が高額となるユニット型が整備されていくことで、入所費用が払えないという状況が空床を生む要因になっていることを直視すべきです。利用者、事業者双方のためにも、こうした入所の制限要件はなくすべきであり、入居費用を低廉なものにしていくことや、所得に応じた減免制度を拡充していくことが必要です。
7期8期計画では、特養の整備目標が掲げられてきたにもかかわらず、9期計画からは掲げられなくなったことは、知事が特養の増設の必要性を持っていないと考えざるを得ませんが、知事の認識を伺います。県としての整備目標を持ち、目標達成に向け県有地の提供や賃借料への補助など整備推進に向けたこれまで以上の取り組みを進めるべきと考えますが、知事の姿勢を伺います。また、待機者がいる一方で施設に空きがあるとの話もある中、空床がある施設の数と空床率、その原因がどのようなものなのか、それに対する県の対策を伺います。

消費者施策推進指針の改正にあたっての県の取り組み強化について
1.訪問販売被害防止に向けたステッカー等による拒絶意思表示の条例化について
神奈川県内の消費者被害は高止まりの状況となっています。オレオレ詐欺などに対して固定電話での対策が進んだことも背景に、電話勧誘販売だけではなく点検商法や押し買いなどの訪問販売による被害が目立つようになり、訪問販売に関する相談が年間6000件近く寄せられています。
2017年の神奈川県消費生活条例改正の際、神奈川県弁護士会をはじめとする各方面から、不招請勧誘禁止条項の導入や、「セールスお断り」「訪問販売お断り」といったステッカーを訪問拒絶の意思表示として条例上明確にすべきとの意見が寄せられました。パブリックコメントに寄せられた半数近くの意見がこの規定に関するものであり、その7割が賛成意見でした。しかし、これらの提案はなぜか見送られました。神奈川県は、「悪質な訪問販売撲滅!かながわ宣言」を出しましたが、必要なのは具体的な対策であり条例上の位置づけです。
消費者の被害回復の観点から、立証が困難な口頭での拒絶に頼らず、一見して明らかなステッカー等による拒絶の意思表示を認めることが、被害救済に大きく役立つことは、弁護士会や消費者団体からも指摘されています。消費者庁の資料によれば、北海道はステッカーの貼付を拒絶の意思表示として運用しており、消費生活センターのあっせん交渉で活用されているとのことです。
そこで今回、消費者施策推進指針の改定にあたり、訪問販売による被害の実態を踏まえ、ステッカー等による訪問販売の拒絶の意思表示を指針に位置付け、条例改正に向けて取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。

2.適格消費者団体の活動維持・発展に向けた支援強化について
適格消費者団体は、消費者問題の解決において重要な役割を果たしています。これらの団体は、消費者が不当な取引や詐欺行為などの被害に遭った際に、集団的な救済や差止請求を行うことで、消費者の権利を守るための活動を行っています。特に、大規模な消費者被害が発生した場合には、個々の消費者が単独で対応するのは困難であり、適格消費者団体が中心となって問題解決に取り組むことが不可欠です。
しかし、適格消費者団体の運営は、会員からの会費やボランティア活動に依存しているのが現状です。これでは、持続的な活動や大規模な問題への対応が難しくなります。そこで、「消費者庁及び消費者委員会設置法」や「消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」では、適格消費者団体に対する資金確保や情報提供など政府に必要な措置を講ずることを求めており、自治体としても連携が必要です。
消費者団体の活動の自主性を尊重しつつも、行政や事業者からの財政支援や情報提供を充実させることが必要です。これにより、適格消費者団体がより効果的に活動できる環境を整備し、消費者保護のさらなる推進が期待できます。
そこで県としても、適格消費者団体の自主性を保ちながら、活動資金の助成や必要な施設・設備の提供、情報提供の充実、寄付を受けやすくする制度の改善といった支援を強化し、適格消費者団体が活動を維持・発展させられる具体的な取り組みを進めることが必要と考えますが、知事の意気込みを伺います。

暮らしと環境に重大な影響を与えるリニア中央新幹線に対する知事の姿勢について
2025年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故は、復旧に向け相当の時間を要すこととなり道路陥没や地盤沈下は私たちの暮らしに深刻な影響を与えることを示しました。交通基盤整備による被害として、県内では2017年に首都高速道路横浜北線工事で擁壁のひび割れや地盤沈下が発生し、2020年には相鉄東急直通線工事に伴う道路陥没事故が起きました。
そして、リニア中央新幹線工事でも問題が続いています。2024年8月には東京都品川区の目黒川で気泡が発生し、10月には町田市の民家の庭から水と気泡が噴出しました。JR東海は工事を中断し、因果関係を調査中です。岐阜県瑞浪市では、リニア工事による水枯れや地盤沈下が続いており、環境影響評価書に記載された対策が実施されていなかったことも判明しました。これはコストや工期優先で住民が犠牲になった例です。
リニア中央新幹線は、品川―名古屋間の工事が進んでいますが、約8割がトンネルで、特に都市部では地上40メートル以深の大深度トンネルを掘削する大規模事業です。静岡県大井川流域での水枯れや異常出水、東京外環道工事のような陥没の危険、東京ドーム約50杯分の残土処理など、問題が山積しています。残土には重金属が含まれ、大雨による崩落の危険も指摘されています。本県でも残土の不法投棄が問題となり、相模原では新駅設置に反対する住民運動が続いています。
2016年、政府はリニア新幹線に3兆円の財政投融資を決定しましたが、品川―名古屋間の総工事費は5.5兆円から7兆円以上に膨らみ、工期の遅れや費用増加が避けられない状況です。JR東海は2027年の開業を断念し、静岡県での着工も未定です。工事の遅れは全国的に広がり、進捗率は10~20%程度と推定されています。
リニア新幹線は既存の新幹線の4倍の電力を消費し、省エネに逆行します。リモートワークの普及で乗降客数の見込みも下方修正が必要です。政府は大災害時の代替手段としてリニアを位置づけていますが、大深度地下を走るリニアこそ災害時に危険です。
品川―名古屋間の所要時間は現行の東海道新幹線で約1時間半、リニアでは40分とされますが、50分の短縮のために巨額の予算を投入し、自然環境や住民生活に深刻な影響を与えるべきではありません。在来線では運転手不足や窓口の無人化が進んでおり、リニア事業の経済性も疑問視されています。
知事はリニア推進の立場ですが、住民の安全と環境を守るため、勇気をもって撤退を進言することこそ、命に責任を持つ知事のなすべき対応と考えますが、見解を伺います。


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