日本共産党神奈川県議会議員団

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政策・提案・見解
2024年2月17日

神奈川県2024年度予算案の発表に当たって

2024年2月15日

神奈川県2024年度予算案の発表に当たって

日本共産党神奈川県議会議員団

団 長     大山 奈々子

4期目となる黒岩知事は、2月6日に2024年度の当初予算案を発表した。予算編成は、岸田政権が基本方針として掲げる少子化対策、国土強靭化、デジタル社会への変革を軸とする考え方を踏まえた上で、障がい者の地域移行を推進するのが特徴である。

県民の声を受けて前進面もあるが、コロナ禍の影響と物価高で疲弊する県民生活を支える観点に欠ける。昨年の県民ニーズ調査では、先行きが暗いと答える声が前年より3.7ポイント増えて42%になっている。希望をもって暮らせる神奈川県にしたいと考える。

(1)一般会計予算案の歳入面での特徴

2024年度一般会計予算案の歳入額及び歳出額は、前年度予算比で6.9%減の2兆1,045億円となった。特別会計と企業会計を含む総額は、同3.6%減の4兆5,117億円となった。県税収入は微増の1兆3,356億円で、賃上げによる個人所得の増加や上場企業の最高益更新を反映して、個人県民税や法人2税が増加した。

借金に当たる県債の新規発行額は、前年度比289億円減の1,074億円。うち臨時財政対策債の発行額は300億円で、ここ10年で最小の規模となり、2024年度末の県債残高も2兆8,820億円に減少する見通しである。

県税収入の最大の税目は今年度も地方消費税で、4,267億円と32%を占める。低所得者ほど負担率が重い消費税の地方への分配である。物価高で県民生活は厳しくなっており、貧困と格差をさらに広げる消費税を減税することこそ必要である。

このような歳入状況の中、今まで以上に県民生活を最優先にした財政運営が求められる。

(2)一般会計歳出面での特徴

歳出に占める義務的経費の割合は8割を超え、退職手当の増加などで人件費が6.3%増の5,230億円、高齢化の進行などで介護・医療・児童関係費が4.7%増の4,672億円となった。

県は財政硬直化と説明するが、必要な社会保障費や県民関連予算を措置することは重要であり、限られた予算を暮らし応援に回せるかどうかが問われている。

(3)予算の主な前進面について

〔教育・子育て支援〕

○ 小児・重度障害者・ひとり親家庭の3つの医療費助成や耐震工事等6事業で、補助格差解消のため政令中核市の補助率を引き上げた。各自治体の福祉施策等の拡充を求める。

○ 私学助成について、多子世帯の授業料無償化の年収要件を約800万円未満から約910万円未満に拡大し、年齢要件も緩和するなど、助成対象の拡大に向けて県単独予算として44億円を計上した。県民運動の成果である。

○ 中学や高校にそれぞれ支援員やソーシャルワーカーが増員される。

○ 当県議団が求めた不妊治療費助成について、市町村と協調して先進医療の費用の7割を補助する。

○ 乳幼児の使用済み紙おむつの処分に加え、簡易ベッドやおむつ保管庫等の物品整備を行う保育所等を支援する市町村に対し、県が補助をする「手ぶらで保育」事業を実施する。

○ 当県議団が強く求めてきた県立高校の図書整備費は、前年度比2.6倍の1億円が計上された。

〔気候危機対策〕

○ 当県議団が提案してきた中小企業向け省エネ設備等の導入補助を増額し、県庁が率先実行する施策として104億円を計上して、太陽光発電等の導入強化や県有施設の照明のLED化及び再エネ電力の使用を推進することは評価できる。

〔災害・安全対策〕

○ 2021年度に策定した水防災戦略を強化したことは重要である。急傾斜地崩壊対策事業費を54億円としたが、さらなる急傾斜地の整備が必要である。

○ 能登半島地震の教訓から、災害時の衛星通信システムや電源、水循環式シャワー、携帯トイレ等の確保に向けて県の備蓄を強化し、能登半島地震を踏まえた対策を行う市町村への補助として、1億3,000万円余を計上した。

○ がけ地近接等危険住宅移転事業費補助として、210万円を計上した。

○ 交通安全施設整備費を10億円増額し、60億円を計上した。

〔医療・介護・障害福祉など〕

○ 当県議団が求めてきた精神科医療の充実に向けて、精神科病院の実態調査等が行われる。

○ 当県議団も求めてきた救急医療相談事業(救急車を呼ぶかどうか迷った場合にアドバイスが得られる「ダイヤル#7119」事業)は横浜市だけが実施していたが、県が主体となって全県展開することになった。

○ 認知症疾患センターの増設など、認知症施策推進体制が拡充される。

○ 障害福祉サービスの重度訪問介護に関し、国庫負担基準を超えて負担する市町村への補助として、新規に市町村重度訪問介護等支援事業費補助2.8億円が計上された。このほか、障がい者の地域生活を支える予算が増額された。

○ 困難な問題を抱える女性に対する支援として、自立支援の新たな施設整備や複合的な問題を抱える女性の課題解決のため、総合相談窓口が設置される。

〔水産業の活性化〕

○ 新規事業を含む「魅力ある水産業の実現に向けた取組」として、藻場の再生や新魚種に対応できる栽培漁業施設への再整備等を進め、また、漁業者の所得向上や都市型水産業の振興に向けて、1.3億円が計上された。

(4)改善すべき主な点について

〔県が果たすべき公的役割〕

○ デジタル推進目的で行われるライドシェアの導入は、県民の安全性を軽視し、タクシー業界の経営不安とタクシー運転手の労働条件の悪化を招くものである。国の悪政の推進ではなく、地域公共交通の充実した支援こそが本来的に求められる。

○ 県立障害者支援施設の方向性ビジョンに沿った取組は、独立行政法人化や民間移譲を進めるものであり、民間では果たせない県の役割の放棄につながるため、見直すべきである。

○ 施設の巡回指導や監査指導も外部委託が提案されているが、これらは公としての県が責任を持って担うべき事業である。

○ 総合療育相談センターでは、入院診療のための病床が廃止される。医師不足を解消し、入院診療は継続すべきである。

〔教育・子育て・労働分野〕

○ 神奈川県の出生数は、1961年以来61年ぶりに6万人を下回った。安心して結婚し、子どもを生み育てやすい社会をつくり、次世代が希望をもって生活できるようにすることが必要である。

○ 労働者が安定した収入を確保できる「正規雇用が当たり前」の神奈川県をめざし、労働関係予算を増額し、県内企業への働きかけや労働相談体制の強化が求められる。

○ 妊産婦健診の公費負担の増額、小児医療費助成制度の拡充が必要である。

○ 教員定数は増えているが、県所管域では昨年9月時点で300人を超える教員の未配置があり、教員不足解消のため、正規雇用を基本とし労働環境の改善に取り組み、少人数学級の推進にも取り組む必要がある。

○ 国において特別支援学校の設置基準が作られたことは前進だが、本県の特別支援学校は基準と乖離しており、支援学級を含めて環境整備が大きな課題となっている。

○ 学校給食費の無償化をはじめ、義務教育の無償化に向けた取組が不足している。また、大学授業料の引き下げや、給付型奨学金制度の拡充などの施策を講じる必要がある。

○ 県立高校の統廃合を進める県立高校改革や、遅れている新まなびや計画は、見直しが必要である。

○ 朝鮮学校に通う生徒への学費補助を行い外国人学校への経常費補助を復活させるなど、改善が求められている。この改善は、多様性の尊重にもつながるものである。

〔気候危機対策〕

○ 横須賀市久里浜に新設された石炭火力発電所は、2023年12月には2号機も前倒しで稼働させた。神奈川のCO2排出量の10分の1を排出する石炭火力発電所は、稼働中止を求める必要がある。

先進国並みに温室効果ガスの削減目標を引き上げ、さらなる施策の充実を図ることで、2030年度の削減目標を達成することが求められる。

〔医療〕

○ 新型コロナウイルス感染症は5類に移行したが、感染拡大は本年2月時点で第10波の様相を呈している。診療体制が弱まっており、新規感染症に対応できるよう、コロナ患者受け入れの整備と財政支援、感染病床の確保、医療人材の増員、高齢者施設や障がい者施設での感染防止対策の強化と併せ、後遺症対応医療機関の周知なども求められている。

○ 神奈川県は、人口10万人対比の病院数、病床数、医師数、看護師数、保健師数が全国最低水準である。医療提供体制は県の仕事であり、2024年度から始まる第8次医療計画(計画期間6年間)において計画的に改善を図るよう、保健医療予算の増額と県の指導的役割が求められている。

〔産業支援の抜本的な見直し〕

○ ヘルスケア・ニューフロンティア政策の未病改善の取組が依然として予算計上されているが、健康や医療の産業化はやめ、健康診断や保健事業の促進に転換する必要がある。

○ 東海道線村岡新駅の設置やそれに関連する区画整理事業、リニア中央新幹線の整備促進、東海道新幹線の新駅誘致とツインシティ計画などは「不要不急の大型開発」であり、抜本的に見直すべきである。また、市町村の再開発事業への補助金や、セレクト神奈川NEXT及びセレクト神奈川100など要件が不適切な19億円もの企業誘致策も、見直しが必要である。

○ コロナ禍、物価高、インボイス制度等に苦しむ中小企業や小規模事業者に対して、融資にとどまらない直接支援が必要である。事業の脱炭素化への支援はあるものの、要望の強い固定費や光熱費などの直接補助が求められている。

日本共産党県議団は2月13日から始まる予算議会において、さらに予算の分析を深め、切実な県民要望の実現と公約実現のために全力を挙げる決意である。

以上


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