PDF版をダウンロード↓
1.県民の安全、労働者の権利を犠牲にするライドシェアの中止を求める
2.県立障がい者支援施設の方向性ビジョンについて
3.再生可能エネルギー普及策に実効性を
4.関東大震災100年に当たって負の歴史の伝承を
5.朝鮮学校学費補助差別解消のために
6.包括的性教育の普及について
7.警察の自浄力を発揮し、県民に頼られる警察を
※追記
18日に回答が出されました⇒回答(PDF版)
1.県民の安全、労働者の権利を犠牲にするライドシェアの中止を求める
ライドシェアに関してはいくつもの問題があります。まず安全面です。
現在、国においてライドシェアの導入が検討されており、本県はその牽引役として、神奈川版ライドシェアの導入の検討が図られています。ライドシェアとは普通免許で自家用車を使って人を有償で輸送することを指し、いわゆる白タクと呼ばれる仕組みであり、現在の道路運送法下では違法とされています。2010年代後半、わが国ではIT産業を中心にライドシェア解禁を求める声が上がり、しかし安全性や労働条件への懸念から国内での全面解禁は挫折しましたが、この夏、タクシー不足、ドライバー不足を理由に、政府においてライドシェア導入が再燃している状況です。10月のWEBアンケートでは15~79歳の60%超が導入に反対だとの結果を、民間調査会社のMM総研(東京)が発表しています。
米配車サービス大手ウーバーは2019年12月、2017年から2018年までの2年間で、アメリカ国内で同社サービスに関連する性的暴行が6000件近く報告されていたとする報告書を公表しています。安全面での問題が繰り返されたことから英ロンドン交通局は同社のロンドンでの事業認可を取り消しています。プロのドライバー、プロの乗客輸送事業者に求められる専門性を軽視した結果です。本県は今まさに安全面への配慮から違法とされている輸送手段を、国家戦略特区などの規制緩和で合法にしようという構図であることを最初に指摘しておきます。
そこで知事にうかがいます。世界各国で、ライドシェアの利用に関連して発生した、暴行・傷害・殺人・強盗などの利用者が被害にあった犯罪行為についてどのような実態があるのかうかがいます。
ライドシェア大手企業のUber Japanが内閣府の規制改革推進会議に本年11月に提出した「諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み」と題したレポートによると世界でライドシェアを導入している国は2類型に分けられます。TNC(Transportation Network Company)型は、Uberのような配車事業者が各ドライバーの管理や運行管理を行うもので、ドライバーに課される要件は基本的に事業者が定めます。一方のPHV(Private Hire Vehicle)型は、個人タクシーの派生形のようなもので、ドライバーに対し登録や車両・運行管理を国が義務付けているといいます。ドライバーは、国の要件を満たし、かつ登録しなければなりません。わが国のライドシェアはこの類型によるとより規制の甘いTNC型に近いのではないでしょうか。
安全性の問題のほかにもいくつか問題を指摘いたします。
1点目の問題は、施策決定の理由があいまいなことです。県行政でよく重視される用語である、EBPM:エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、エビデンスに基づく政策立案が全く成されていないことです。「政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくもの」として県はことあるごとにこの単語を口にしますが、神奈川版ライドシェアにおいてはエビデンスがゼロの見切り発車になっています。そもそもの需要を調べていません。まずは三浦市において検討を進めるとしていますが、三浦市で営業するタクシー会社のうちの1社は19時以降の営業を停止しています。第1回の神奈川版ライドシェア検討会議ではタクシー事業者のこのような声があります。「そもそも需要がない中でライドシェアがビジネスとして成り立っていくのか、何人が困っているのか、もしやったら何人ぐらい乗るのか、何台ぐらい必要なのか、そのへんがですね、わかっている上で議論を進めていき…(中略)タクシー会社が何をできると思っているのか。そのあたりを突き詰めて聞いてみたいなと思っております。」との発言がありました。担当課によると「交通手段がなくて困っている人がいるという声を聴いている」ということですが、三浦市職員からは、市長が声を聴いていたり、市議会から指摘があることを述べる一方、「市に対していろいろな市民の方からの意見をお寄せいただく仕組みがいくつかありますが、その中ではあまり言われていることではないというのが一方であります」需要の有無が全く不明なまま、現状、ニーズ調査もされないままです。実証実験で初めてニーズを把握する予定だといいます。施策立案の際にはデータ分析を行って踏み切るのが県行政の常であるはずですが、この異例の進め方は別な事情があるのかと推察します。
2つ目の問題としてドライバーの権利保障があります。
実証実験段階では三浦市が事業者となりますが、いずれは民間に担っていただく予定だといいます。タクシー会社に協力を得て運行管理やドライバーの研修をお願いするということですが、タクシー会社がこの業務を担う対価はどうなるのか、ドライバーの雇用形態や、事故が起こった際の責任の所在はどうなるのかタクシー会社の疑問に答える中身が定まってない状態です。「ちょっと悪い言葉で言うと、後の責任、タクシー会社でよろしくね、と言われているように感じてならない」という事業者の言葉がありました。不安定雇用を増やし人件費を切り縮めてきたこともコストカット型経済の形でした。岸田首相が転換を図るといっているコストカット型経済を逆に推し進め、身分保障のない雇用を増やすことになるのではないでしょうか。そうではないというならば、なぜ検討会にドライバー当事者が加わっていないのでしょうか。本県施策によって無権利労働者が拡大することは許されません。
3つ目の問題はIT産業の利益誘導が疑われることです。
2010年代後半、わが国にライドシェア導入を推進しようとしたソフトバンクグループや楽天グループはそれぞれ海外のライドシェア企業大手に64億ドルと3億ドルを出資していたとの報道があります。
2回の検討会を通じてタクシー会社からの懸念にはほとんど答えられない中で定まった方針は、夜間の19:00から25:00という運行時間帯と、運賃はタクシー料金と同等、実証実験は三浦市が主体で行うということに加えて、配車依頼はアプリを使った手法に限ることが示されました。当初、配車の選択肢として挙げられた方法は電話やアプリを使ったものが候補とされましたが、電話の申し込みという方法はなくなりました。予想通りです。検討会では三浦のタクシー会社から、配車依頼の95%が電話によるものであるとの指摘がされているにも関わらず、選んだ手法はアプリです。交通課題を解消するはずの取組が国交大臣より河野デジタル大臣が推進役を担っている時点で、アプリを介する手法ありきであることは私たちは想定していましたが、あまりにも露骨です。IT産業の商機拡大が目的なのでしょうか。アプリの配車なら既存のタクシー配車アプリがあります。導入に慎重な自治体がある中で、重要なことが不明なまま前のめりな本県の姿勢は県民の理解が得られるとは思えません。
三浦市の限定された地域の夜間帯の対応が施策の目的であるにしても、地域公共交通を担うプロとしての使命からタクシー事業者が守ってきた輸送の安全性を低減させることはあってはならず、真の問題解決にはなりません。
神奈川版ライドシェア導入のために地域公共交通を守るべき関係者に時間的にも労力知力ともに余計な負担を強いるのではなく、人材不足をどうすればいいか、コミュニティバスなど検討できないか、利用者もドライバーもともに安全性が守られる仕組みの構築にこそ心を砕くべきです。
そこで知事にうかがいます。安全性への懸念が解消されず、EBPMを踏まえておらず、労働者の権利も不明であるにもかかわらずIT産業商機開拓ありきの神奈川版ライドシェアは取り組むべきではないと考えますが見解をうかがいます。
また、県民の社会参加を支えるために地域公共交通の充実を図ることこそ支援すべきと考えますがこのことについて知事の見解をうかがいます。
2.県立障がい者支援施設の方向性ビジョンについて
まず、県立障がい者支援施設の役割についてです。
第3回定例会の前半で厚生常任委員会に県立障がい者支援施設の方向性ビジョンの素案が出されました。素案では「福祉科学研究と人材育成へ役割を転換し、(中略)率先して当事者目線の支援モデルを示していく」と書かれていますが、これまでの検討の中で出された当事者や関係団体などから寄せられた意見が反映されていないと思います。
例えば、2021年9月の第4回当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会の参考資料には、「障がい当事者及び関係団体に対するヒアリング結果(概要)」が出されています。その中で県立障がい者支援施設の役割として障がい当事者の団体からは、「地域生活支援」として「官民の人事交流で、情報をフィードバックする必要がある。」「民間でも重度の人を受け入れられるようになっている。」という意見や「地域拠点としての支援」としては「地域の拠点としてリーダーシップを取ってほしい。」などの意見がありました。
また、関係団体からは、1つに先駆的な支援の実施、情報発信等としては「全国の民間施設の先進的な取り組みを集約し、提供できるようにしてほしい。」との意見。2つに強度行動障がいのある方への支援強化では「強度行動障がいのある方への支援について専門性を持ち、県内事業所等に指導及び助言できる役割。」「強度行動障がい等の県立施設での受入れや研修機能の充実。」という意見。3つに地域拠点としての支援では「多問題家族への支援は、相談支援事業所としても最困難相談となり、県立施設の拠点機能を活用した支援が必要。」という意見。4つに入所機能を活用した、地域生活支援の充実・強化では、「地域生活支援拠点として相談や短期入所枠の拡大等に期待する。」という意見があります。このような意見は今回の素案では、取り入れられていないように思います。
そこで知事にうかがいます。当事者や関係団体の意見を反映させることが重要と考えますが、今回の素案にこれらの意見の反映がないことをどのようにとらえているのかうかがいます。
また、これらの意見を反映させるためには、現在の県立施設は民間移譲せず、市町村と連携し、地域のネットワークづくりの核となる県立施設を目指すことが必要と思いますが、見解をうかがいます。
次に、県立障がい者支援施設と神奈川県立保健福祉大学との連携に関してうかがいます。
素案では、具体的な取り組みとして「大学や民間事業者等と連携して科学的根拠に基づく当事者目線の支援を確立」と記載され、神奈川県立保健福祉大学等と連携して研究を進めるとしています。
しかし、当事者目線の支援という定義そのものが曖昧であるとともに、科学的根拠に基づくという点も、これまでの様々な研究成果とは違う科学的根拠とはどういうものなのかもはっきりしません。ここにはこれまでの障がい者支援についての研究成果をどうとらえているのかが問われていると思います。
さらに、県立保健福祉大学では、福祉の専門家を育てているとはいえ、障がい分野を専門に研究しているとは聞いていませんし、今定例会の議案として提案されている中期目標案にも、障がい福祉の研究については言及されていません。このようなことから、この素案の策定にあたり、急遽方向性を検討したもので、県立保健福祉大学の在り方などを深く検討した結果ではないように感じています。
そこで、知事にうかがいます。県立保健福祉大学と連携した研究とのことですが、障がいはその障がいの内容によって支援の在り方が違うものとなりますので、研究の対象や支援の内容について、具体的にどのようなことを検討しているのでしょうか、うかがいます。
また、これまで、自閉症や強度行動障がいについても一定程度の研究が進んでいます。県内には、教育関係にはなりますが、横須賀市に国立特別支援教育研究所などもあり、これまでも研究が進められてきています。
また、国立リハビリテーションセンターなどでも研究成果が示され、厚生労働省がこれらの研究成果を発表しています。このようなこれまでの研究成果をどのように評価し、今後の研究の中に取り入れていこうと考えているのか、見解をうかがいます。
次に、民間の障がい者支援施設で働く従業員の労働状況の把握について伺います。
素案の中には、県立施設の民間移譲や地域生活移行を促進することも記されています。しかし、現状の民間施設では、人手不足で大変な状況です。その最大の理由は、仕事の大変さとともに労働環境が良くないというのも挙げられます。例えば、2021年に横須賀市の障害とくらしの支援協議会と横須賀市グループホーム協議会が行った障がい者グループホームへのアンケートは、非常に参考になるものです。
最終的なまとめとして大きく3つ挙げています。1点目は、直近10年間では、支援区分3・2の方が多く、受け入れ対象者は、設置法人(団体)・の考え方によるところが大きいこと。2点目は、支えるスタッフの高齢化と非常勤勤務者が多く、年額総賃金が200万円以下と低賃金状態になっていること。3点目が人材育成に欠かせない研修等がなされる環境が整っていないことや人材募集のマッチングが上手くいかないことが挙げられています。そして最後に改善すべき環境として「人件費の増額と高齢化重度化に対応できる職員の確保と質の向上が急務と考えます。」と記載されています。
そこで知事にうかがいます。県立施設の在り方を検討すると同時に、地域の受け入れ状況やサービス事業所の増設などが必要であり、今後の方向性を検討する上でも、民間の障がい者支援施設での労働状況を把握することは大変重要です。年齢構成、男女の雇用数、勤続年数、雇用形態、勤務時間、賃金などの状況を把握するべきと思いますが、これらの調査を行うことについて知事の見解を伺います。
また、国に対して報酬単価の引き上げを求めるとともに、今まで以上に県としての単独補助のメニューを増やすとともに補助の増額をする必要があると思いますが、見解をうかがいます。
次に、中井やまゆり園の独立行政法人化について伺います。
素案には、独立行政法人化すると柔軟な対応ができると記されています。
しかし、柔軟な対応とはどういうことで、なぜ、県立施設では柔軟な対応ができないのかなどがはっきりわかりません。
そこで知事にうかがいます。柔軟な対応ということでは、新たなグループホームや日中活動の場を設置すること、施設改修や人事配置のことなどが挙げられるかもしれませんが、それらのことが1年間の内にどれほど頻繁に行われ、また、直営では迅速に対応できない原因はどういったことなのでしょうか、見解をうかがいます。
また、中井やまゆり園として地域との連携を図り、地域のネットワークづくりを進める上で改革が必要なのは運営形態ではなく、県としての取り組み姿勢であると思います。今後の県立障がい者支援施設としての役割を果たすためにも、中井やまゆり園は独立行政法人とするのではなく、直営で行うべきと考えますが、知事の見解をうかがいます。
3.再生可能エネルギー普及策に実効性を
脱炭素社会を実現するためには、省エネ対策の徹底や再エネ設備の導入拡大のほか、再エネ電力の利用拡大にも取り組む必要があります。
本県は再エネ電力の普及のために、再エネ100宣言RE Actionに参加し、県有施設の使用電力の再エネ100%化を目指して取り組むとともに、アンバサダーとして、県内の企業や団体に対し、再エネ100宣言RE Actionへの参加や、使用電力の再エネ100%化を求めています。
また、県独自の取り組みとして、「かながわ再エネ応援プロジェクト」を実施し、小売電気事業者の再エネ電力プランを県内企業等に広く周知するとともに、再エネ電力への切換えを行った県内企業等を認定・公表しています。
こうした取り組みは、再エネ電力の利用拡大への意欲がうかがえるものであるが、脱炭素社会の実現に向けては、更に取り組みを強化する必要があると考えます。
そこで知事にうかがいます。
県では、県有施設の使用電力を2030年度までに100%再エネ化することを目標としているものの、現状では、総電力使用量は4.2億KWHのうち再エネは8千万KWH、率としては19%にとどまっており、取り組みの更なる強化のため、具体的にアクションプランなどなんらかの数値目標を設定した具体的な取組が必要だと考えるが見解をうかがいます。
また、再エネ100宣言RE Actionには、自治体としては本県以外には逗子市が参加しているにとどまっています。各地での再エネ率向上のために自治体に参加を促す取り組みが必要だと考えるが見解をうかがいます。
さらに、私たちは企業の自発性に期待する施策のみでは、再エネ100目標を達成するには限界があると感じています。SDGS先進県と謳う以上は企業にも社会的責任をもって義務的に再エネ促進に取り組んでいただく必要性を訴えてきましたが、今後、事業活動温暖化対策計画書制度の見直しなどにより、一定の強制力を持って企業に取り組んでいただく仕組みの構築を求めたいと考えるが見解をうかがいます。
4.関東大震災100年に当たって負の歴史の伝承を
初めに知事の歴史認識についてうかがいます。
関東大震災100年を記念し防災意識を喚起する取組が本県でも各種行われてきました。同時に関東大震災を語る際に忘れてならないのは、直後に行われた朝鮮人虐殺という悲劇です。
日本弁護士連合会が本年2023年9月1日に会長声明を発し、その中に以下のような指摘があります。
「関東大震災の直後には、「朝鮮人が暴動を起こしている」「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの流言飛語を端緒として、わずか数日のうちに、軍隊や自警団等によって多数の朝鮮人・中国人が虐殺された。当連合会は、2003年8月、この虐殺に関し、政府に対して、軍隊及び自警団による虐殺の被害者・遺族に対し、その責任を認めて謝罪すべきであり、また、虐殺の全貌と真相を調査し、その原因を明らかにすべきである旨勧告した。
この虐殺の背景には、当時の日本人の朝鮮人・中国人に対する民族的差別意識があった。
(―中略―)また、この虐殺は、流言飛語を端緒としてなされ、差別的言動がヘイトクライムやジェノサイドといった物理的暴力を誘引したものであった。そして、今日では、AI(人工知能)を用いて容易にフェイク画像が作成されたり、真偽の確認が不十分なままSNS等を通じて情報が拡散されたりするおそれがあり、流言飛語が拡散しその影響が拡がる危険は飛躍的に高まっている。」
このような情勢の中、松野官房長官は震災記念日前後の記者会見で朝鮮人虐殺について問われた際に「政府内において事実関係を把握する記録は見当たらない」という答弁を繰り返しています。しかし、市民団体「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」が、朝鮮人虐殺について、神奈川県が内務省に朝鮮人虐殺の状況を報告したとみられる文書が見つかったと9月4日に発表しています。犠牲者145人の殺害場所や日時、年齢などの詳細が記載されている資料であるとのことです。
そこで知事にうかがいます。本県の有する公文書の中でこれまで朝鮮人虐殺について記録されたどのような情報を把握していますか。
また、本県から内務省警保局長にあてた資料が発見されましたが、これら資料の存在によって、松野官房長官の史料の存在を否定する発言の信憑性が問われると思います。まず知事として本県における朝鮮人虐殺についてどのように受け止めているのか認識をうかがいます。また、正しい歴史認識のために本県から国に対し資料を示し、国に対して資料の調査と適切な保全を求めるべきと考えますが、あわせて見解をうかがいます。
横浜市では市立中学校で使用している副読本の2012年度版に「虐殺」と明記されたために「誤解を招く」として、市が”異例”の回収措置をとったことがあります。史実は本来風化させたり歪曲することなく正しく伝えらえなくてはならないと考えます。震災時に流言飛語による悲劇を繰り返さないためにもしっかり事件を語り伝えていくことが大事です。
そこで知事にうかがいます。また、関東大震災100年を記念した関連アーカイブに朝鮮人虐殺事件はどのように記録されていますか。また今後、事件の伝承にどのように取り組んでいきますか。
5.朝鮮学校学費補助差別解消のために
ともに生きる社会の実現に向けて質問します。
幼保無償化や高校無償化の対象から朝鮮学校を除外する国の動きの中で、改めて自治体の姿勢が問われています。
初めに朝鮮学校のわが国における歴史について説明します。
朝鮮学校のルーツは、日本の韓国併合の際、強制移住や出稼ぎ労働などで多くの朝鮮人が日本へ移住してきたことにあります。1945年の朝鮮解放後、日本政府の帰国対策が十分ではなく、朝鮮半島の治安も安定しない中約60万人が日本に残ることになり、かつ日本の同化政策のため母国語を話せなくなっている子どもたちに朝鮮語を教えることが必要だと考え各地に国語教習所が作られました。「自分たちの言葉を取り戻す」というごく当たり前の願いがそもそもの始まりです。
現在は、学校教育法第1条に定められた学校の種類、 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園の10校、いわゆる1条校とは違う各種学校としてしか認められておらず、子どもたちは大学受験資格や通学定期券問題など克服しなければならない課題と向き合ってきたのでした。補助金が1条校に比べ著しく少ないことが生徒減少の一因となってきました。こういう歴史の延長に無償化除外問題や、補助金停止問題があります。
黒岩知事は知事就任後2012年県庁を訪れた朝鮮学校の子どもたちに対し「拉致問題は子どもたちには何の責任もない」とし、「ともに生きていく第一歩にしよう」と励まされました。この言葉に子どもたちは大変勇気づけられたといいます。しかし2013年には「県内の朝鮮学校5校に交付してきた県独自の補助金を平成25年度(2013年)当初予算案に計上しない」と発表。北朝鮮での核実験が理由だと発表しました。2014年からは経常費補助に代え、学費補助制度を導入し、2014年、2015年度はこの制度で学費補助が実施されましたが、2016年からは拉致問題を盛り込んだ教科書改訂がなされないことを理由に学費補助は支給されていません。
はじめに有識者からの声について質問いたします。
本県が開催している、かながわ人権政策推進懇話会において2019年、6名もの委員から朝鮮学校補助金不支給問題を批判する意見が出されていました。私は、この意見をきちんと知事に届けているのかという問いかけがあった場面を傍聴しています。その事実が2021年の予算委員会で私が質問するまで知事に一切届いていなかったという問題がありました。
何のために有識者に集まりいただき時間をとっていただいているのでしょうか。担当課のどの段階でどんな忖度が働いたのかわかりませんが、委員のみなさまにきわめて失礼な話だと考えます。各種協議会や審議会で出された意見のすべてを知事に共有することが困難な場合があるかもしれませんが、世論を二分する課題について、特に政策への批判があればそこは真摯に伝えるべきと考えます。情報共有が担当課の判断にゆだねられているのであれば、知事の施策を批判する耳の痛い意見は届けないようにしようとする恣意的な判断が生じかねません。為政者の側に立てば「耳を傾けざるは賢明ならざる」ということわざもあります。
そこで知事に伺います。県の審議会や協議会の結果について、知事への報告や関係部局を含めた情報共有が確実に行われるよう、統一した運用ルールを設けるべきと考えますが、
見解をうかがいます。
次に朝鮮学校の教育内容に介入することについて質問します。
国においては高校無償化除外のおもな理由について「教育内容の確認が困難」であることが挙げられてきましたが、私学の自主性を重んじる私立学校法の理念に立てば教育内容に国や行政が干渉すること自体が問題です。私立学校法に規定されている「私立学校の自主性」とは、私立学校が私人の寄附財産等により設立されたものであることに伴い、その運営を自律的に行うという性格をいいます。そのため同法は私立学校の自主性を尊重するため、所轄庁の権限を国公立の学校の場合に比べて限定しています。学校教育法には第十四条に 「学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定又は監督庁の定める規程に違反したときは、監督庁は、その変更を命ずることができる。」という条文がありますが、私立学校法第5条は「私立学校には、学校教育法第十四条の規定は、適用しない。」と記されています。授業の事項について監督庁である神奈川県が授業内容について口をはさむことはそもそも法が許していません。しかも数ある外国人学校の中で朝鮮学校だけに教育内容の干渉を行っています。本県が補助金支給の「前提」としている拉致問題の教科書への記載は財政難で教科書改訂ができないという事情を無視した条件であり、副読本の作成をもってしても当初の約束を強弁する姿勢はあまりに道理を欠いているといわざるを得ません。
本県は、たびたび朝鮮学校を訪問し、教育内容の確認を行ってきました。学校側もことあるごとに授業内容や教材をオープンにして地域に開かれた学校となっています。しかしながら例えば京都などでは朝鮮学校前で「スパイ養成校」と叫ぶようなヘイトスピーチが繰り広げられていました。県内で繰り広げられるヘイトスピーチもその背景にはこのような朝鮮学校の教育内容に対する偏見があると思われますが、本県、私学振興課の認識としては、朝鮮学校に関しては、県に届け出た学則で学校の目的や教育課程が書かれており、それに基づいた教育が行われているというものだと聞いています。また、神奈川県弁護士会が、2017年、人権救済申立を受けて、人権擁護委員会において調査の結果、翌年、知事に対して学費補助金不支給という人権侵害を直ちにやめるよう等警告を行っているが、その際の調査報告書では、 2,学園において行われていた拉致問題の授業内容について5年間に渡って視察を行い「使用している 教材及び授業内容を把握した。適正な授業が行われたと認識している」と回答しています。
本県が朝鮮学校だけを補助金支給から排除する扱いこそがいわれなき偏見を助長するのではないでしょうか。
わが会派の2022年6月の代表質問において、教科書記載内容を理由として、生徒に経済的不利益を強いていることには、政 治的介入に当たると考え、知事の見解を聴いた際に、「学園の了解の下、朝鮮学校の教育内容を確認」した旨の答弁をしています。
そこで知事にうかがいます。私立学校法第5条を鑑みれば、同意があろうとも、私立学校である朝鮮学校の教育内容への介入は違法になるのではないかと考えますが見解をうかがいます。
次に補助金不支給問題についてです。
朝鮮学校への学費補助の継続が県民の理解を得られないと知事はおっしゃっていますが、国際的にも民族教育が尊重されている中で、朝鮮学校だけを排除する差別について胸を痛める県民の存在は多いのです。本県へ届けられる声にも現れているのではないでしょうか。
そこで知事にうかがいます。過去に補助金復活を求める要望がどこから何件、署名は何筆届いていますか。また国連や法曹界などから国や本県の朝鮮学校差別について勧告や声明など発出されたのはどのようなものがありますか。
県が補助金不支給を決定したことを契機に横浜市も川崎市も補助金を切りました。県の判断は実に罪深かったといえます。朝鮮学校では神奈川県の補助金が不支給となって以来4億円近い補助金が入らないために先生たちのお給料の遅配、校舎がボロボロで耐震診断すらできない状況にあり、小学校でも学費が月に約3万円の負担があることから多くの在日コリアンの子どもたちが朝鮮学校で学ぶことをあきらめざるを得ない状況にあります。本県が多文化共生のシンボルとして朝鮮学校の子どもたちに各種国際的なイベントに参加してもらっていながら補助金を全く出していないことは恥ずべき事態だといわざるを得ません。ただし川崎市では、2022年度決算で健康診断や防犯ブザー購入費など健康・安全事業に106万4千円、朝鮮学校と近隣の学校などとの多文化共生・地域交流事業に105万1千円を支給しています。
知事が、学費補助を凍結した際、「盾になり続けた気持ちが失せた」という発言がありました。多文化共生や子どもの学習権を理解しない県民からの声を受ける立場もあると思いますが、当初、子どもたちに罪はないとおっしゃった人権感覚を取り戻し理解できない県民に理解をうながすことこそ知事の仕事ではないでしょうか。補助金支給を続けている6県、北海道 長野 静岡 愛知 滋賀 兵庫の知事はヘイトスピーチに負けず人権尊重を貫いています。
そこで知事にうかがいます。当事者主流化、とも生き主流化をスローガン倒れにしないため、朝鮮学校への学費補助金を再開すべきと考えますが見解をうかがいます。
6.包括的性教育の普及について
今年は有名芸能プロダクション・旧ジャニーズ事務所における世界史上稀に見る大規模な性犯罪が露見し贖罪の過程を多くの国民が注目することになりました。この問題を扱う様々な記事の中で有識者からは、早期の性教育の必要性が語られています。
その意味では本県が昨年、性に関する指導の手引きを改訂して、学習指導要領の中身に加えて人権尊重の視点を持った手引きに改訂したことは、私たちが求めていたことであり、包括的性教育の推進につながるものでもあり、高く評価します。ボリュームも20倍近くのページ数になり、中身も充実したものになったと考えます。私たちは国に対しても機会をとらえて包括的性教育を求めていますが、文科省としては現行の性教育の水準でよしとしている状況です。本県の先進的な取組がまだ、全国的には知られていないと考えますので、本県の取組を他県にも普及させていくことが必要だと考えますが、まずは県内の早期の普及が課題です。性犯罪の被害者にも加害者にもならないために、保育園や幼稚園、小学校中学校など早期にこの手引きで教育を行うことが必要だと考えます
そこで教育長にうかがいます。本県の性に関する指導の手引きを改訂するにあたって、どのような専門家の知見を得て取り組まれたかうかがいます。また、従来の性教育の手引きから改善したポイントについてうかがいます。また、直接この手引きを活用して教育に取り組むのは県立学校であるかと考えますが、各学校はこの手引きを具体的にどう生かしていくのでしょうか。また、さらに早期に適切な性教育を行うために市町村への普及が必要だと考えますがどのように普及していくか見解をうかがいます。
7.警察の自浄力を発揮し、県民に頼られる警察を
今年度私たち共産党県議団は2件の警察対応の案件に関し、県民から相談を受けています。問題の構造が類似しているため、警察の県民対応と自浄力に問題があると感じ是正を求めたいと思います。
2件ともに、県民が、恋人間または親子間のトラブルがあった際に警察に助けを求めた事案ですが、いずれも当事者が「警察の行為によって性被害に遭った、または負傷した」と主張しているものです。
個人情報に関わるので詳細は述べませんが、1件目は、恋人間のトラブル。通報者が男性恐怖症であることを把握していながら、男性警官を現場に派遣し、後に女性警官が来る旨の説明もないまま、ともかく動くな、家に戻るなと行動制限をされ、制止を突破すべく争う中で転倒させられ、何度も胸に触られた等と相談者が訴えている件。被害者は事件のショックで仕事に行けない状況に陥っています。PTSD等医師の診断書も出ています。
2件目は、親子間トラブル。親子喧嘩の末、親子ともにお互いに手をあげ、中学生の子どもから警察に通報があった件。一時的に離れた方がいいという警察のアドバイスを受け、適切な場がなかったため、母親から「児童相談所へ連れて行ってほしい」と依頼。警察が3人がかりで子どもを連れていこうとし、子ども本人が児相行きを拒んだにもかかわらず力ずくでつれて行こうとし、さらに8人の応援を要請。11人の大人に囲まれて引き倒されたり頭を足で挟まれたりして恐怖を味わったとされ、2日間の通院で、脳震盪 頸椎捻挫 腹部打撲擦過傷 背部打撲擦過傷 右肩打撲傷 左肩打撲擦過傷 左耳擦過傷 右膝打撲傷の診断書が出されていることを確認しています。
問題は二点あります。一点目は、出動要請を受けた後の警察の対応です。両件ともに、当事者が刃物など所持していないか不明な中で、結果として過剰とも思える人員の投入が行われることや、緊迫した局面で、警察も多少は強引な対応もあり得ることはやむを得ないかもしれませんが、その結果、助けを求めた県民を身体的にも精神的にも著しく傷つけた場合の対応が問われます。県民が泣き寝入りする場合もあるでしょう。例示した当事者の方々は、あまりに不当だと思い、納得できず、私たちに相談に来られる前にそれぞれ自身で地元警察署や警察本部に説明を求めています。そしてそれぞれ、「対応は適切だった」と冷たく回答され、「あなたレベルには説明することはない」などとの暴言まで吐かれたとのことです。
二点目は、警察組織のガバナンスが機能しているのかという問題です。県民が、地元警察では納得のいく説明が受けられない、と、「警察の警察」と言われる監察官室に相談しても、特に回答がない、聞き置かれるという目に合っています。そこで困りあぐねて私たちにご相談があり、私たちも警察本部に同行して困りごとの相談窓口である広報県民課に丁寧に話を聞いてはいただきました。しかしながら、そのあと結局問題対応が疑われる当該地元署に対応が任されて、1件は何か月も回答なし、もう1件は当日対応した警官から「対応に問題はなかった」と言われるにとどまっています。当該地元警察署に自省を求めるだけの対応では、真に問題対応の検証ができるとは思えません。広報県民課にうかがうと、県民からの是正を求める相談を上部機関に送付する場合としない場合が混在していること、同一相談者からの案件を一貫して担当する方が決まっていないため、2回目の相談の際、初回に相談した担当者が在室していたとしても、電話に出た者が別の職員であればまた一から同じ説明を強いられるなどの課題も明らかになりました。
親子喧嘩を発端に、結果的に警察の行為によってたくさんの傷を負うことになった被害当事者の中学生に現在の心境を聞いたところ以下の言葉がありました。「ちゃんと謝ってほしい。困っていたから警察を呼んだのに、何であんな事をされなきゃいけなかったんだ。あんな酷いことをされて死ぬかと怖かった。死んでたらどうしてたんだ。警察は頼っちゃダメなんだ。」
県民にこんなことを言わせる警察でいいのでしょうか。「ケガをさせられて一言の謝罪もないのか」というのは両件に共通する相談者の嘆きの言葉です。地域の治安を維持するために住民の協力は不可欠です。県民に理解され、頼られる警察であるために自浄力を発揮していただきたいと思います。
そこで警察本部長にうかがいます。
今回は女性警官が少ないことが原因で起こった問題もありました。女性警察官に期待できる役割に対する認識と、今後どういうテンポで増やしていくか見解をうかがいます。
次に、県民から警察対応について苦情の申し出があった際に、苦情を確実に受けとめ、丁寧に検証する仕組みが必要だと考えます。苦情申出という負担を何度も県民に負わせることのないよう、広報県民課から当該警察に戻すのみならず、確実に上部組織である警察本部の所管部署に情報共有するとともに、事件の対象職員の職務執行の是非について調査し、問題点のある職務執行について講じた措置について第三者が誠実に報告することが求められます。苦情対応の現状の課題と今後の改善方針について見解をうかがいます。
また、今回のように県民がその苦情処理に納得できない場合、次の手段を知らせることも重要です。
警察法第79条には、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に文書で申し出ることができると定められています。また、同条の解釈・運用基準において、公安委員会は、申出の内容を適切に処理し、その結果を申出者に通知することや、都道府県警察に対し、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置を行わせるとともに、その結果の報告を求めることなどが規定されています。
警察法79条の規定は、1999年9月以降に相次いで発生・発覚した警察の不祥事案を受けて、警察職員の職務執行に関する苦情の組織的かつ適切な処理を期して、2001年6月に施行されたものです。
しかしながら、今回の二つの事案では、苦情相談後「問題はなかった」とされて納得できないという相談者の声を聴いていながら、公安委員会を通じるこの手続きが相談者に何ら説明されていないようであり、警察法が求める苦情の組織的かつ適切な処理が行われていないといわざるを得ません。
そこで警察本部長に伺います。
広報県民課で行っている苦情の相談対応と警察法79条の苦情申出手続きは、どのような関係にあるのでしょうか。また、広報県民課による対応に納得いただけない県民に対し、警察法第79条の手続きを案内するなど、苦情を組織的かつ適切に処理するために、両手続きの連携・連動が必要と考えますが、どのように対応しているのか見解をうかがいます。