神奈川県 2023 年度予算案の発表にあたって
2023 年2 月13 日
日本共産党神奈川県議会議員団
団長 井坂 新哉
黒岩祐治神奈川県知事は、2 月8 日に2023 年度の予算案を発表しました。
2023年度予算案は4月の県知事選を控えての骨格予算とのことですが、留保財源は約50億円しかなく、実際はこれまで進めてきた政策をそのまま継続することや予算の増額、新規事業なども示されており、知事選を意識した予算ともなっています。2023 年度予算は、物価高騰の中、県民生活を支え県民の切実な願いを実現する予算としなければなりません。また、国の大軍拡・大増税の方針が示されていることや、新型コロナウイルス感染症の対策が縮小される状況ですので、県民のいのちと暮らし、平和を守るために最大限の努力が求められます。
(1)予算の歳入面での特徴
2023 年度一般会計予算案は、前年比832 億円減(96.5%)の約2 兆2,616 億円となりました。県税収入は、前年度比829 億円増(106.6%)の1 兆3,325 億円となっています。物価高の影響で地方消費税収入が前年度比 110.8%の 4,462 億円となり、個人県民税を大幅に上回る最多の税目となっています。また、円安の影響による輸出企業の業績回復などで、法人二税も前年度比108.9%の3,356 億円となりました。
2023 年度の税収増は物価高と円安が大きく影響していますが、その反面、実質賃金は下がり年金給付も生活保護費も物価高騰に見合った引き上げにはなっておらず、県民の生活はさらに厳しい状況に追い込まれることが懸念されます。税収増を低所得者や子育て世代などの県民生活を支えることや中小企業や個人事業主などへの支援強化に使うことが重要であり、県に強く求められることです。
(2)物価高騰から県民や中小企業・個人事業主などの生活と営業を守るための予算の充実を
新自由主義政策の強化に他ならないアベノミクスで始まった「異次元の金融緩和」により、日本経済の土台が脆弱になっています。その影響で急激な円安と物価高を招き、県民生活と中小企業などの経営が厳しい状況になっています。国として、消費税の減税、年金給付や生活保護費の引き上げ、子育て世帯や低所得世帯への支援の強化、中小企業や小規模事業者への固定費の補助や賃上げのための支援など行う必要があります。また、県民生活を守るために、県として、税や保険料や水道料金などの公共料金の値下げなどを行うことも検討し、まずは暮らしの支援を第一に考えた政策が必要となっています。しかし、2023 年度予算案にはそのような姿勢が感じられません。県としての支援策が求められます。
(3)新型コロナウイルスの感染拡大防止の取り組みについて
新型コロナウイルスの感染対策は3 年を超えました。政府は感染症法の分類を2 類相当から5 類に引き下げ、対策を緩和するとしています。しかし、治療薬も不十分な中で、感染対策を緩めることでさらなる感染拡大につながるとの不安もあります。コロナ感染が減少している時期に次への備えを行うことは、これまでのコロナ対策の教訓です。無料の検査キットの配布など検査体制の見直しを行い、一般の診療所でのコロナ感染者の受け入れ体制の整備とそのための財政支援、感染症病床の増床や医師、看護師、保健師の増員、高齢者施設や障がい者施設での感染拡大防止対策の強化などが求められます。
(4)2050 年温室効果ガス実質ゼロに向けた気候危機対策と防災対策の強化を
地球温暖化の影響と見られる激甚災害が、毎年発生しています。2021 年度に策定した水防災戦略でこれまでの対策を強化したことは、重要な取り組みでした。また、2023 度予算案では水防災戦略を改定し、3 年間で前回計画よりも767 億円増の2,142 億円と対策を強化したことは評価できます。しかし、河川整備や急傾斜地対策などは早急に進める必要がありますので、さらなる対策の強化が必要です。
一方で、災害が頻発する大きな要因となっている地球温暖化の対策として、2030 年度の温室効果ガスの排出削減目標を2013 年度比46%から50%へ引き上げたことは重要です。また、再エネ、省エネ対策として、これまでわが団として求めてきた既存住宅の省エネ改修費補助や中小企業向けの省エネ設備等の導入補助を増額したことに加え、県有施設への太陽光パネルの設置を促進する等の事業費を増額したことも評価できます。しかし、温室効果ガスの削減目標を先進国並みに引き上げて、さらなる施策の充実を図らなければ2030 年度、2050 年度の削減目標を達成できず、県としてさらなる対策の充実が求められます。
また、横須賀市久里浜に新設された石炭火力発電所は、本年6 月に本格稼働が予定されています。地球温暖化対策に力を入れるのであれば、欧米各国と同様に2030 年度までに石炭火力発電をゼロにするため、新設される石炭火力発電所の稼働中止を求める必要があります。
いずれにしろ、2050 年度に「温室効果ガス実質ゼロ」に向けた本気の取り組みが必要です。
(5)教育、子育て支援の充実を
神奈川県でも 2020 年に続き、2021 年も人口減少となりました。その一番の要因は自然減です。とりわけ出生数は予想よりも減少スピードが速く、2021 年の国内での出生数は 80 万人を下回りました。安心して結婚し、子どもを生み育てやすい社会をつくることで、次の世代が希望をもって生活できるようにすることが必要です。
非正規労働を正規労働に変え、安定した収入を確保すること、不妊治療、妊産婦健診の公費負担の増額、小児医療費助成制度のさらなる拡充、学校給食費の無償化など教育費の無償化、大学授業料の引き下げ、給付型奨学金制度の拡充などの施策を講じることが必要です。また、教育分野では、教員不足を解消するために教員の正規雇用を基本とすること、基本教員定数の増や教員の労働時間の短縮など、労働環境の改善にも取り組む必要があります。教育環境の整備が求められます。
◆予算の前進面について
○小児医療費助成制度を拡充し、2022 年度の36 億円から60 億円と増額したこと。初めて県として子どもの貧困実態調査を行うこと。
○気候危機対策として、再生可能エネルギーの普及や既存住宅省エネ改修費補助などを拡充したこと。
○水防災戦略を改定し、3 年間で前回計画よりも767 億円増の2,142 億円と対策を強化したこと。
○県立学校の老朽化対策や耐震改修、トイレ改修、空調設備の改修、特別支援学校の新設などの学校整備予算を増額したこと、など。
◆改善すべき点について
○ヘルスケア・ニューフロンティア政策の未病改善の取り組みが依然として予算計上されており、大幅に見直し、健康診断や検診を促進する必要があります。
○JR東日本と神奈川県、藤沢市、鎌倉市で進めている東海道線の村岡新駅の設置と鎌倉市深沢地域の区画整理事業などの開発事業、リニア中央新幹線の整備促進、東海道新幹線の新駅誘致とツインシティ計画などは「不要不急の大型開発」であり、見直しや中止をすべきです。また、政令市の再開発事業への補助金やセレクト神奈川NEXTなどの企業誘致策も、見直しが必要です。
○医療・福祉分野では、コロナ禍で明らかになった医師・看護師・保健師の不足、病床及び感染症病床の不足など、医療提供体制、保健所体制の強化に関する予算があまりにも不足しています。同時に、急性期病床が少ないにもかかわらず、急性期病床を回復期病床に転換する際の回復期病床等転換施設整備費補助を進める姿勢は、改めるべきです。
○医師、看護師、介護・障がい福祉の従事者、保育士などのエッセンシャルワーカーの労働条件の改善と賃金アップなどを進める予算が不足しています。エッセンシャルワーカーの養成に、積極的に取り組むべきです。
○小児医療費助成制度のさらなる拡充、重度障害者医療費助成制度やひとり親家庭等医療費助成制度の拡充など、県民の要求を実現する予算へと変える必要があります。
○教育分野では、学校給食費の無償化を初めとした義務教育の無償化に向けた取り組みが不足しています。県立高校統廃合を進める新まなびや計画の見直しと、正規教員の増員、定数増が求められます。朝鮮学校に通う生徒への学費補助を行うことや、外国人学校への経常費補助を復活させるなどの改善が求められます。学生の学びを保障するため、さらなる給付型奨学金の拡充や県独自の学生への支援策を行うことが求められます。GIGAスクール構想に基づく教育プログラムを教育産業に任せることなどは、改める必要があります。
日本共産党県議団は2 月13 日から始まる予算議会において、さらに予算の分析を深め、切実な県民要望の実現と公約実現のために全力を挙げます。
以上