5月20日に大山奈々子県議【横浜市港北区】が議員定数条例案に対する反対討論を行いました。
議員定数条例案反対討論
共産党 大山 奈々子
日本共産党神奈川県議会県議団として今定例会に示されました「神奈川県議会議員の定数、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例案」に反対する立場から討論を行います。
反対の理由は、今回強制合区が検討された三浦市選挙区と足柄下選挙区、2つの選挙区に関して、今回示された条例案に妥当性が認められないからです。議員定数等検討委員会報告書は、どういう観点で検討したかの記載はあっても、どういう理由で決定に至ったかの記載がされていないという意味で不十分な報告書であると考えますので、わが会派の反対理由を述べたいと思います。
1点目は三浦市選挙区についてです。特例として単独選挙区で残すか、横須賀市との合区にするかが検討され、単独選挙区としての条例案が示されていますが、 私たちは三浦市選挙区については、横須賀市選挙区と合区すべきと考えます。 理由を3点述べます。 1点目は一票の較差解消の観点です。2020年国勢調査確定値によると9,23万7,333人を 105人で除した議員一人当たりの人口が8万7974,6人、これに対して三浦市の人口は4万2,069 人、定数1で議員一人当たり人口の2分の1を割込んでいます。 議員一人当たりの人口が一番多い座間市の13万2,325人と比べると一票の較差では3倍を 超えることになります。衆議院選挙に例をとれば、一票の較差を巡っては、最大較差が2倍を超えた 2010年までの3回の選挙について最高裁はいずれも違憲状態だという判断を示していま す。違憲状態は解消されるべきと考えます。
2点目は公職選挙法の据置き期間の解釈の問題です。 公選法では、強制合区対象の人口になったとしても、当分の間は当該区域をもって一選挙区を設けることができるとされていますが、国の調査から三浦市の人口予測を見ると、2025年は38,227人とされており、較差は拡大する一方です。 行政の努力等で人口減に歯止めがかかったとしても、一票の較差を改善する方向は期待できません。弾力的な運用を可能にする当分の間という規定はあるものの、その運用は やはり、一票の較差是正を念頭に置くべきと考えます。よって現段階では合区することはやむを得ないと考えます。
3点目は公正性の観点です。 三浦市長による神奈川県議会議員選挙区の合区の検討に関する要望書は、「地域的まとまりを尊重し、その意向を都道府県政に反映させることが、長期的展望に立った均衡 の取れた行政施策を行うために必要」との論旨ですが、この論に立てば、過去に合区を余儀なくされた地域の意向は県政に反映されてこなかったのかが問われることになります。 現状、本県議会議員によって選出区の広範なニーズを捉え、県政につなぐ努力がされて いると考えますし、限られた議席を負託された議員にはその役割と責務が厳しく問われると考えます。三浦市長の懸念は理解するところではありますが、従来合区が行われてきた地域と比べ、三浦市のみがその特例であり続ける合理的な事情は見当たらず、合区されてきた選挙区との公平性を考えても、やはり一票の較差解消をめざすべきと考え ます。
次に、足柄下選挙区についてです。検討委員会では当初、足柄下選挙区を南足柄市・足柄上選挙区と合区するか、小田原市選挙区と合区するかがで検討が始まりました。しかし結果的には当初案になかった南足柄市・足柄上選挙区を分区し、 足柄上を単独選挙区として設置し、足柄下選挙区と南足柄市を合区するという案が可決され、条例案に示されました。我が会派としては次に述べるような理由をもって、足柄下選挙区は小田原市選挙区と合区し、南足柄市・足柄上選挙区は現状どおりとすることが妥当と考え ます。
理由を述べます。 1つ目は歴史的背景です。昭和47年、1972年、南足柄市は元々足柄上郡に属しており、 市制施行に当たって、足柄上郡から離脱した経緯があります。 2つ目は行政機関に着目しました。小田原保健福祉事務所足柄上センターは、南足柄市及び足柄上郡に住む県民を対象にし、足柄上地域首長懇談会は南足柄市と足柄上郡5町で構成され、西湘地域首長懇談会は小田原市と足柄下郡で構成されています。一方、小田原市と足柄下郡では、小田原警察、小田原土木センターともに所管域は小田原市と足柄下郡、商工会議所も小田原・箱根区域が所管で、行政圏、生活圏の一体性が高いと考えられます。
3つ目は過去の議員定数等検討委員会の検討経緯を尊重する点です。そもそも前回 2018年2月23日の議員定数等検討委員会において、南足柄市選挙区を隣接するどの選挙区と合区させるべきかについて検討される中で、自民党の委員から、南足柄市はかつて足柄上郡の一部であったという経緯、また地勢的に見ても交通の面でも地域住民の皆様の 生活面、小田原市との合併協議が破談したという事情など総合的に勘案した結果、南足柄市選挙区の合区先は足柄上選挙区が妥当であろうとの結論に至ったとの発言があり、 これには十分妥当性がありましたので、我が会派としてもその案に賛成したという経緯があります。さらに、4つ目は当該地域からの声を尊重する観点です。3月に足柄上郡5町の首長が本県議会議長に対し提出された要望書では、足柄下郡と南足柄市の合区を検討する議論があると聞き及んでいるとした上で、「その合区は合理性も納得性も全く感じない」とし、「5町の町民とともに断固反対」と表明、その理由として次の4点を挙げています。1つには行政区域や生活圏の一体性が最も重要、2つには足柄上郡5町と南足柄市は歴史的 にも行政的にも住民の一体感が強固にある、3つには町民や有権者一人一人が腑に落ちるものでなければ民主主義の根底が崩れる、4つには足柄上郡5町と南足柄市は強制合区となったばかりだが、この合区が極めて自然、また、南足柄市も2月に当議員定数等検 討委員会委員長、3月には本県議会議長にそれぞれ面会し、「足柄下郡との合区反対」とする要望書を手渡しています。報道では、南足柄市長は足柄下郡との合区の議論は寝耳に水で断固反対と述べておられます。足柄下選挙区を巡っては、南足柄市議会も議長に議員全員の連名で歴史や実態を考慮することなどを求める要望書をすでに提出されておられ、前回の神奈川県議会議員の一般選挙において合区された選挙区については、選挙区再編の対象としないこととの求めが記されています。
これら歴史的経緯、行政機構、前回検討委員会での審査結果、地元からの声などを考慮した結果、南足柄市・足柄上選挙区は現状どおり残し、小田原市選挙区と足柄下選挙区を合区 することが適当だと考えます。
このたびの議員定数等検討委員会の合区案を受けて、南足柄市と足柄上5町の6市町の議員が超党派で抗議行動を展開されているという報道もありました。「われわれは前回合区を受け入れたのにまた引きはがされる。県西部はないがしろにされている」との怒りは無理もないと考えます。
どの選挙区から選出されたとしても、私たちは県民の代表として、県内各地から県議会に寄せられた要望を真摯に受け止め、県議会議員として 県内全体を視野に住民要求を聞き取ると同時に、地域代表として隅々まで地域の声を議会につなぎ、県政を前進させることは議員の責務であることを自覚しつつ、定数条例決定の際には、歴史的経緯、行政圏、生活圏、住民感情など総合的に考慮して判断すべきことを申し上げて反対討論といたします。