2022年 第1回定例会 反対討論
2022年3月25日
日本共産党の上野たつやです。
私は、共産党神奈川県議団を代表して、本定例会に提案された41議案のうち33議案に賛成し、8議案には反対する立場から、主なものについて討論を行います。
討論に入る前に、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる問題について述べます。
ロシアがウクライナに侵略を開始してから、昨日で1か月が経過しました。首都キエフなど、各地の住宅、病院や学校など民間施設を攻撃し、民間人を殺傷する行為は、ウクライナの国民と国際社会への許しがたい行為であり、また、核兵器の先制使用を示唆することは、唯一の戦争被爆国として許すことができません。強く抗議し、即時、無条件撤退を求めます。
県議会においては、3月7日に「ロシアによるウクライナへの侵略に断固抗議する決議」が全会一致で可決されました。私たちも、国際世論の力を高め、ロシアの無法を止めるために、引き続き皆さんと共に頑張ることを述べ、討論に入ります。
まず、定県第1号議案「令和4年度 神奈川県 一般会計予算」についてです。
新年度予算案は、新型コロナウイルスの感染拡大の中での予算であり、長引くコロナ禍で苦しくなった県民の生活を立て直し、営業と暮らしを支えるために、県として力を発揮できる予算にしなければなりません。
そのような中、新年度予算案は、前年比114.5%と県税収入が大幅に増加し、約2兆3448億円となりました。
この、増収分を活用するなどして、“コロナ禍で顕在化した生活困窮者対策として、子ども食堂への支援や生理用品の配布”など、新たな課題等へ対応したこと。また、“水防災戦略の推進”、“急傾斜地崩壊対策”、“交通安全施設整備”、“県立教育施設の整備”や“医療的ケア児に対応する看護師の増員”など、県民の安全・安心や、生活に直結する事業が拡充されたことは大変重要であり、引き続きの推進を強く要望します。
しかし、問題と考える予算もありますので、反対の理由を述べます。
一つは、知事の政治姿勢として「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」についてです。
現在県は、ヘルスケア・ニューフロンティア政策の推進に向けた第二の核として、鎌倉市深沢のまちづくりを村岡新駅と一体で進めようとしています。
しかし、まちづくりに賛成する立場の住民からも、「新駅設置の必要性がない」という意見があるように、地域住民の要望から進められたものではなく、住民を置き去りにした事業だと言わなければなりません。概算事業費で、新駅設置に総額150億円もの費用がかかる事業はやめるべきです。
さらに、もう一つの柱である「未病関連事業について」ですが、
私たちは、これまでも、未病関連事業は不急な事業であるとして中止を求めてきました。
今年度に引き続き、未病指標の精緻化、未病産業の創出・拡大のための予算に加え、昨年は不急の事業として計上されなかった「未病コンディショニングセンター機能実証事業費」など未病関連事業が新年度予算には提案されています。
そもそも、県が進めようとしている未病関連事業は産業支援であり、未病サービスや関連商品の消費を促す取り組みが優先され、県民の健康維持を第一の目的にしたものではありません。本来、健康増進のために県が優先して行うべきは、市町村が行う特定健診や特定保健指導、健康診査や健康教育、がん検診などの様々な取り組みを支援することです。
健康を産業化する未病関連事業については、抜本的な見直しを求めます。
次に、「セレクト神奈川NEXTなど、企業誘致施策について」です。
私たちは、神奈川県の立地条件などから、「大企業を含む企業誘致施策に過大な税金投入を行う必要はない」と反対をしてきましたが、少なくとも、税金を用いた補助金である以上、他県が設けているように、県民の雇用など一定の要件は必要と考えています。企業誘致施策の目的に、“県内雇用の創出”を掲げておきながら、「企業に過度な負担を与える」として、補助金の要件に県民の雇用を盛り込まず、実績の把握すら行わない姿勢は改めるべきです。
次に、「住民の要望とはかけ離れた事業や大型開発事業について」です。
“受託リニア中央新幹線建設推進事業費”や“東海道新幹線新駅を誘致する東海道新幹線新駅設置推進対策費”と、それに関連した“ツインシティ計画に伴う土地区画整理事業費補助”、“政令市市街地再開発臨時補助”、“明治記念大磯邸園整備特別補助”、そして“国直轄事業負担金としては、横浜湘南道路の費用”など、不要不急の事業と言わざるを得ないことに加え、環境への影響、多額の費用をかけることに対する県民の反対意見などを受け止め、これらの事業の推進はやめるべきです。
次に、「県立高校改革について」です。
2015年に“県立高校改革実施計画の一期”が策定されて以来、私たちは繰り返しその問題点を指摘してきました。質の高い教育の充実を謳い、推進校や研究校、重点校の名で学校の特色付けを進めた結果、中途退学が非常に多かったことが無理な特色づけの弊害を表していると考えます。
また、本県の高校1校当たりの生徒数は全国一多いにも関わらず、さらに大規模化を生み出す高校の統廃合はやめるべきです。
最後に、「議会費について」です。
私たちは、県政調査に関しては制度の廃止を求めています。
県政調査の費用は、県政調査実施要領において議員1人当たり100万円以内と規定されており、新年度予算では旅費として2,633万円が計上されています。県内の市町村議会で、県政調査と同様の制度を持っている議会はありません。県議会としても会派の視察の必要性があれば政務活動費で行い、県政調査の制度を廃止すべきと考えます。財政難を謳うのであれば、議会としても議会費の節減に努めるべきです。
以上のような理由から、定県第1号議案に反対します。
中止や見直しを求め、改めるべきと指摘した予算については、さらなる防災対策の強化や小児医療費助成制度の拡充、重度障害者医療費助成制度の拡充、特別支援学校の増設、教員の増員、中学校給食の助成制度、国民健康保険料の引下げなど、県民が望む、優先度の高い施策に振り向けるべきです。
また、「新型コロナウイルス感染症対策について」ですが、
国において、3月22日以降、本県のまん延防止等重点措置が解除されることが決まりました。新規感染者数は減少傾向にあるものの、高い水準で推移していること、亡くなる方も続いていることから、解除については懸念があります。
また、これまで実施されてきた、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置期間中の対応について、コロナ感染症対策として有効だったのかどうかの検証は必要です。多くの企業が影響を受ける中、飲食店を中心とした対象範囲の狭い協力金など、産業支援の妥当性やあり方については不十分さが目立ちました。
何より、全国で唯一、自主療養の制度をもうけ、厚労省の通知を理由に、感染症法から逸脱した対応を取り続けている以上、県内の正確な感染状況の把握や対応は困難です。自主療養制度については中止し、法の枠内での対応を求めます。
現段階で、第6波が終わったとは言えません。今後の感染拡大を起こさせないために、保健所や医療体制の強化、とりわけ病床そのものを増やすことはもちろん、医療機関や高齢者施設・障がい者施設だけではなく、学校、幼稚園、保育所や学童など子どもの感染を防ぐために、集中検査や定期的検査をはじめとしたPCR検査体制の強化を求めます。
社会機能の維持のためにと、濃厚接触者の特定もせず登園を認め、保育所職員が感染リスクを負ってもやむなしとした旨の通知については撤回し、今後、行政の準備不足のツケを現場に押し付けることが二度と無いように求めます。
次に、定県第2号議案「令和4年度 神奈川県 市町村自治振興事業会計予算」、定県第4号議案「令和4年度 神奈川県 公営競技収益配分金等管理会計予算」についてですが、私たちは公営ギャンブルの廃止を求めておりますので、賛成できません。
次に、定県第9号議案「令和4年度 神奈川県水源環境保全・再生事業会計予算」についてです。
この事業における水源環境保全、再生への取り組みは、水源環境保全税などを財源とするものです。水源環境の保全・再生施策には、治山や水源林整備事業などが含まれており重要なものですが、こうした事業は一般財源で対応し、県民に負担増を求めるべきではないと考えますので、反対します。
次に、定県第13号議案「令和4年度 神奈川県 国民健康保険事業会計予算」についてです。
2020年度の決算剰余金の充当によって、2022年度の市町村国保事業費納付金は、一人当たり4,246円の負担軽減につながるとのことです。今後も、決算剰余金の活用については、保険料の負担軽減のために活用すべきです。
一方で、国の保険者努力支援制度について、直近の評価では、法定外繰入を削減したことに関する評価が高くなっているとのことですので、被保険者に負担が増えたと思われます。
国民健康保険料は、協会けんぽなどと比較しても保険料が高過ぎて払えないという住民の声に応えるために、各自治体が苦慮しながら保険料引上げの抑制に取り組んできました。
本来、国の責任で保険料を引き下げるために、国庫負担金を増やす必要があるのにもかかわらず、保険者努力支援制度で、自治体の努力を締めつけること自体、安心して医療を受けるための社会保障制度としての国民健康保険制度の目的から外れていると言わねばなりません。県もこれに準じた対応をしており改善すべきと考えますので、反対します。
次に、定県第16号議案「令和4年度 県営住宅事業会計予算」についてです。
現在、相模原市の上溝団地と横須賀市の追浜第一団地においてPFIによる建て替え事業が進められていますが、今後については、現在のPFI事業の状況を見て判断するとのことです。県として住民の意見を聞きながら余剰地の活用などもできることですから、県営住宅の建て替えについては、直営で行うべきと考えます。
また、PFI事業は、従来の公共分野の仕事を広く民間の事業に変えていくものであり、公共の役割が後退する懸念があります。県民にとって大事な公共施設の整備については、県が責任を持って行うべきと考えますので、反対します。
次に、定県第18号議案「令和4年度 神奈川県水道事業会計予算」についてです。
これまでも指摘してきましたが、箱根地区の包括委託はやめるべきと考えます。第二期 箱根地区水道事業包括委託事業の受託事業者である“箱根水道パートナーズ(株)”は、施設管理、運転監視、全体的管理の業務をヴェオリア・ジェネッツ(株)が行っていることから、結果として世界的な水メジャー企業に日本での水道事業の運営、実績づくりをさせる結果となっています。命を守る水道が、水ビジネス多国籍企業の営利の対象とされないためにも、包括委託ではなく県営水道直営に戻すべきと考えますので、反対します。
また、水道システムの再構築に向けた取り組みでは、他の事業者とも連携して検討するとのことですが、いまだに具体的な費用負担などの数値が出されないままです。施設のダウンサイジングは重要な取り組みですが、神奈川県広域水道企業団に過度に依存するようなシステムでは問題があると考えますので、慎重な検討を求めます。
また、水道事業については、水道料金の見直しに着手するとのことですが、生活に欠かすことのできない水を県民が安全で安価に購入できるよう、値上げにならないように特段の配慮が求められます。
次に、定県第33号議案「神奈川県立衛生看護専門学校条例の一部を改正する条例」についてです。
本条例が改正されれば、県内で准看護師から看護師を目指す方の道が一つ閉ざされることになります。今後は、県内一か所の民間の学校、もしくは通信制の学校を利用することになります。
県が、専門性の高い看護師を養成したいというのであればなおのことですが、最後まで行政が責任を持ってその道を閉ざすことなく残しておくべきと考えますので、この改正案については反対します。
以上、定県第1号、第2号、第4号、第9号、第13号、第16号、第18号及び第33号議案に反対することを述べ討論といたします。以上です。