8月30日、あいちトリエンナーレ2019の「表現の不自由展・その後」に関する黒岩知事の発言について、申入れを行いました。
神奈川県知事 黒岩祐治 殿
2019年8月30日
日本共産党神奈川県議団団長 井坂新哉
日本共産党神奈川県委員会委員長 田母神悟
「表現の不自由展・その後」に関する知事の発言に抗議し、撤回を求める申し入れ
8月27日の定例会見の場で、「あいちトリエンナーレ2019」で中止に追い込まれた企画展「表現の不自由展・その後」について、知事は「あれは表現の自由ではなく、極めて明確な政治的メッセージ」、「もし同じことが神奈川県であったなら私は(開催を)認めない」と発言したことが報じられています。さらに知事は、日本軍「慰安婦」を象徴する「平和の少女像」は、「事実を歪曲したような形での政治的なメッセージ」、そして「慰安婦」の強制的な連行というのは韓国の一方的な見解として、事実を否定する発言を行いました。
このような発言は、憲法の表現の自由を否定する点でも、歴史の事実を捻じ曲げるという点からも到底許すわけにはいきません。
第一に、憲法第21条の「表現の自由」は戦前の反省に立って制定されたものであり、芸術・文化の「表現の自由」は広く認められなくてはならず、多様な表現の機会を保障することこそ自治体や国の責務です。芸術・文化への公的助成について、その内容に知事や政治家が踏み込むことがあってはならず、専門家の判断にゆだね、国や自治体は“金は出しても口は出さない”という原則が守られるべきです。
第二に、知事が「事実を歪曲したようなもの」と述べた「平和の少女像」が象徴している日本軍「慰安婦」制度は、当時の日本政府と軍による「性的奴隷制」であり、日本が、真摯に向き合い、誤りを認め、清算すべき歴史の事実です。1993年の河野洋平官房長官談話でも、政府見解として「慰安婦」問題で「軍の関与と強制」を認め、「おわびと反省」を表明しています。この点で、知事の日本軍「慰安婦」制度に対する認識は、事実誤認と言うべきものです。
第三に、知事が「表現の自由ということから逸脱している」と述べた企画展「表現の不自由展・その後」で展示されていた「平和の少女像」は、製作者のキム・ソギョンさんとキム・ウンソンさんによれば、「いま、戦争は絶対にダメだという日韓の市民の連帯」の“架け橋”となることを願って製作されたものであり、韓国の一方的な主張としての政治的メッセージですらありません。その意味で、「表現の自由ということから逸脱している」という指摘は全く的外れであり、友好に水を差すものです。
定例会見での知事の一連の発言は「表現の不自由展」の開催に関する仮定の話であったとしても、自治体の首長が発言することによって行政の事務に影響を及ぼす可能性があり、芸術分野での表現や政治的発言を自由に行うことへの萎縮効果を生みかねません。
私たちは、同趣旨の企画への「絶対に(開催を)認めない」、また日本軍「慰安婦」制度を「事実を歪曲したようなもの」等の知事の発言に抗議するとともに発言を撤回するよう求めます。
以上