日本共産党神奈川県議会議員団

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議会報告
2024年5月21日

視覚障害のある方への県警対応についての訴訟で、県が控訴したことについての反対討論(20240520井坂しんや反対討論)

反対討論を行う井坂議員

2024年第2回定例会 本会議反対討論

 日本共産党の井坂新哉です。

私は、日本共産党神奈川県議団を代表し、知事から提案のありました県報第2号に反対の立場から討論を行います。

今回提案された議案は、2019年に警察官が視覚障害のある方に事情聴取をした際、本人の同意なく住居に立ち入ったことや障害者に対する合理的配慮の提供がされなかったことなどについて訴訟が起こされ、2024年3月21日に神奈川県が敗訴し、4月4日に控訴をした専決処分の承認を求めるものです。

控訴理由としては、本人の許可を受けて居室に入っているため、判決には事実誤認があること。また、障害者に対する合理的配慮の提供についての法律判断に誤りがあるとのことです。

今回の議案の賛否を判断するに当たり、私たちが特に重視したことは、合理的配慮の考え方と具体的な場面での対応、今後合理的配慮の提供をどのように推進していくかという点でした。

判決文の原告の主張によれば、原告は警察官の訪問が午前0時近くの深夜であり、視覚障害があるがゆえに本物の警察官かどうかわからない中で不安を抱えたまま対応を始めていたこと。また、原告の男性は就寝前だったため下着姿であり、女性警察官がいることを知らずに対応することとなり、相当に恥ずかしい思いをしたとのことです。

警察官は玄関に入る際、原告の女性から白杖を示され、原告の男女ともに視覚障害があること、女性には聴覚障害があることを告げられていました。

県警の主張では、障害者差別解消法第7条2項の合理的配慮の提供について「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があった場合において、合理的配慮をしなければならず、今回の事案では原告側が具体的な意思の表明をしていない状況であり、その社会的障壁の除去に努める法的義務はない。」「合理的配慮の法的性格は努力義務に過ぎない。」と主張しています。しかし、このとらえ方は、障害のある当事者目線からの主張とは言えず、合理的配慮の提供をあまりにも矮小化したものと言えます。

この点について裁判所の判断の中でも指摘されています。

裁判所は、神奈川県警が2016年3月に定めた「神奈川県警察職員の障害を理由とする差別の解消の推進に関する規定」の第4条2項において「職員は、障害者が現におかれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について考慮するなど、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応しなければならない」と規定していることを示し、合理的配慮の提供義務を負っているとしています。

そして、法が規定している「意思の表明」については、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることが伝えられることを指し、警察官が障害者の障害について認識し、配慮すべき事項が明白でそのための手段や方法が合理的に想定できる場合にも合理的配慮の提供義務が生じるとし、今回の事案について法的な義務違反が生じているとしています。

私たちは、この裁判所の判断が大切だと考えます。

障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供については、この4月から民間事業者にも義務化され、いろいろな場面でそのあり方が課題となりますが、この課題はさまざまな事例や障害当事者とのコミュニケーションなどを積み重ね、実践していく必要がある課題だと思います。

 神奈川新聞の報道で、原告は「判決を通じて一つの事例を知ってもらい、世の中の人に何か考えてもらえたら」と答えており、原告側代理人の弁護士も「晴眼者(これは晴れに眼と書き視覚障害のない人のことを指します)の方から言葉や音で積極的に情報提供することが必要との問題提起になれば」と話しているとのことです。

警察官が日々多くの通報や相談の中で対応に苦慮する場面も多いと思います。障害者に対して合理的配慮を提供する必要性がある一方で、生命などに係る緊急性のある事案もあり、どういった状況で、どのような配慮を行うかの判断に迷うこともあると思います。そういった状況に際して現場の警察官が少しでも判断しやすくするためには、今回のような事案を振り返り、今後の教訓とするべきではないでしょうか。

今回控訴するということは、この時の対応を正当化するものとなり、原告側のこのような問題提起を受け止めない姿勢になってしまいます。

 早期にこの事例を検討し、今後の合理的配慮の提供の一つの試金石とするとともに、県警として具体的な事例集などを作り、現場の警察官がわかりやすく、学ぶことができるようにするべきと思います。

以上のような観点から、県報第2号に反対いたします。

ぜひ、神奈川県警が「ともに生きる社会かながわ憲章」を推進する立場で、障害者への合理的配慮の提供を先進的に取り組んでいただけるように願いを込め、討論といたします。


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